2013.03.09更新

咬み合せと顔貌(がんぼう)

歯を治す場合、咬み合せの高さが合わないと不快ですが、それだけでなく、筋肉や顎の関節のバランスが悪くなり、悪影響を及ぼします。1本、2本の歯を治す時は、他の歯が咬み合うので、その咬み合っている位置を参考にして歯をつくります。しかし多数歯を治す場合は、参考となる咬み合せの位置や高さがないので、幾つかの指標となるものを頼りにつくります。

新たに設定した咬み合せの位置が左右、前後にずれていると咬みにくく、顎が痛くなることがあります。また高さが大きくずれていると、筋肉、関節だけでなく、顔貌(がんぼう)にも大きく影響します。

特に無歯顎や多数歯を失った患者さんでは、咬み合せが低すぎると老けて見えてしまいます。
1 鼻の下から顎の先までの距離が短くなる
2 唇の両脇がかぶさって、しわが深くなる
3 ホウレイ線が深くなる
4 上唇の周りに細かなしわがよる
このような理由から、咬み合せが低くなると顔つきが老けてしまいます。

咬み合せを確認する作業時に最終的には、顔貌を見て決めます。実際の症例でお話しましょう。



臨床症例
多数歯欠損で上、下顎に義歯を装着する症例です。(女性 66歳)
数本の歯が残っていますが、すれ違い咬合と言って、残っている歯同士は全く咬み合いません。
   
   右側           正面           左側



咬み合せを記録する時や、完成前の最終チェックでは、顔貌の指標を使って確認をします。
  a(鼻の脇から下顎の先までの距離)  =  b(眼から唇の脇までの距離)
a と b の距離が同じぐらいの状態で咬み合せの位置を決めると、顎の関節も安定した位置にあり、顔貌も自然で歯を装着する前に比べて若返ったようになります。

 

上下の唇のバランスが良く、唇の周囲に細かなしわがありません。口角(唇の両端)も自然で、横から見たときの上唇周囲のハリも自然できれいです。

歯をいれる前と歯を装着した時の顔貌を比べて良くなることは、とても大切です。
顔つきが変わることで、表情も豊かに若々しくなることも稀ではありません。
噛めるようになるという、機能面での改善は当然のことですが、若々しく、表情がいきいきとなる顔つき、審美性を取り戻すことも、とても重要です。


 by 小林デンタルオフィス 池袋本町 北池袋 歯科


投稿者: 小林デンタルオフィス